
目次
はじめに:検索広告の「常識」が覆りつつある
あなたは最近、Googleで何かを検索するとき、以前とは違う感覚を覚えたことはないでしょうか。「〇〇 おすすめ」「〇〇 比較」といったシンプルなキーワード検索だけでなく、「長距離出張が多いビジネスマンに向いているスーツケースってどれ?」「子どもがいる家族で夏に行ける涼しい国内旅行先」のような、まるで人に話しかけるような会話形式のクエリが当たり前になってきました。
これはGoogleが「AIオーバービュー」を本格展開してきたことの影響が大きいです。消費者の検索行動は確実に変化しており、かつての「キーワードで検索して、リストから選ぶ」というパターンから、「自分の状況を説明して、AIに最適な答えを教えてもらう」というパターンへと移行しつつあります。
こうした変化に対応するために、Googleが2025年に投入したのが「AI Max for Search campaigns」です。
弊社のブログでも、過去たくさんのGoogle×AIの進歩をご紹介いたしました。
そして、この「AI Max for Search campaigns」が1周年を迎えた2026年4月末、Googleは複数の重大発表を立て続けに行いました。
- AI Maxの新機能発表(1周年記念)
- AI Max for Shopping campaigns の正式発表
- Dynamic Search Ads(DSA)のAI Maxへの強制アップグレード計画
この3つの発表は、Google広告の世界における「AIファースト」への本格移行を宣言するものであり、日本のデジタルマーケターにとっても無視できない変化です。本記事では、それぞれの発表内容を丁寧に解説し、実務上の意味と今後の対応策まで踏み込んで解説します。
第1章:AI Max for Search campaigns とは何か
まず、前提知識として「AI Max for Search campaigns」の概要を押さえておきましょう。
従来の検索広告が抱えていた限界
従来のGoogle検索広告は、本質的に「キーワードと入札の組み合わせ」で成り立っています。広告主は「どんな検索クエリに対して広告を出すか」を事前にキーワードとして登録し、一致条件(完全一致・フレーズ一致・インテントマッチ)を設定して運用します。
しかしこのアプローチには、現代の検索環境においていくつかの根本的な限界があります。
第一に、網羅性の問題です。ユーザーが実際に入力するクエリは無数に存在しますが、広告主が事前に登録できるキーワードには限りがあります。特に会話形式の長いクエリが増えた現代では、「どのキーワードを登録しても網を張りきれない」状況が生まれやすいです。
第二に、一貫性の問題です。キーワードに応じて広告文と遷移先URLを設定するという従来の仕組みは、「ユーザーが予想外のクエリで来た場合に最適なランディングページへ誘導できない」という問題を引き起こします。検索意図とランディングページの内容がずれると、直帰率が高まりコンバージョンが得られません。
第三に、運用コストの問題です。ロングテールのクエリをカバーしようとすると、キーワードリストが膨大になり、管理の手間が増大します。
AI Maxが解決しようとしていること
これらの課題に対して、AI Max for Search campaignsは「AIの力で、広告主の意図を理解しながら、自動的に最適なマッチングを行う」というアプローチを取ります。
具体的には、以下の3つの主要機能で構成されています。
① 検索クエリマッチング キーワードを超えた幅広いクエリとのマッチングを、AIが自動的に行います。広告主のビジネス内容や提供する広告素材、ウェブサイトのコンテンツなどを総合的に理解した上で、関連性の高い検索クエリに広告を表示します。
② テキストカスタマイズ 単一の広告文を用意するのではなく、ユーザーの検索意図に合わせてAIが動的に広告テキストを生成・選択します。広告主のアセット(見出し、説明文など)を素材として、最も効果的な組み合わせを自動的に選定します。
③ 最終ページURL拡張 広告をクリックしたユーザーを、指定のURLではなく、サイト内で最も関連性の高いページへ自動的に誘導する機能です。「商品Aのランディングページを設定していたが、ユーザーの検索意図には商品Bのページの方が適している」という場合に、AIが自動的に最適なページへ誘導します。
ローンチから約1年で、Googleの「最速成長」広告プロダクトに
AI Maxはリリース以来、驚異的なスピードで普及が進みました。Googleの発表によれば、AI Max for Search campaignsは「最速で成長したAI搭載の検索広告プロダクト」となりました。世界中で何十万もの広告主がすでにAI Maxを活用してSearch campaignsを拡大させています。
そして2026年4月末、AI Maxは1周年という節目を迎え、さらなる機能拡張と、他の広告フォーマットへの展開という形で大きな進化を遂げました。
第2章:AI Max 1周年の新機能発表
2026年4月30日、Google Ads公式ブログにてAI Maxの1周年を記念した新機能発表が行われました。発表の中心となったのは3つの改善・新機能です。
新機能1:AI Brief — 自分の言葉でAIを操縦する
これまでのAI Maxは、AIが自律的に判断して広告配信を最適化するものでした。しかしその「自律性」は、ブランドの意向や特定の制約条件を細かく伝えるのが難しいという課題をはらんでいました。「うちのブランドはこういうトーンで語るべきです」「この製品をこういう人たちに届けたい」という広告主のノウハウをAIにうまく反映できなかったのです。
そこで登場したのが「AI Brief」という新機能です。GoogleのGeminiを活用したこの機能は、広告主が自分の言葉でAIに対してガイダンスを提供できる仕組みです。
AI Briefは3つの軸でガイダンスを設定できます。
① メッセージングガイドライン 広告に何を言わせるべきか、そして何を絶対に言ってはいけないかを指定できます。例えば「価格については一切触れないこと」「必ず○○という言葉を含めること」「競合他社との比較をしないこと」といった指示を、自然な文章で入力できます。
② マッチングガイドライン どんな検索クエリに対して広告を出したいか、逆にどんな検索には出したくないかを設定できます。例えば「健康的な食材に関する検索を優先してほしい」「ブランド名を含む競合他社への検索には出したくない」といった境界線を引けます。
③ オーディエンスガイドライン ターゲットとしたいオーディエンスを定義し、そのオーディエンスに合わせたメッセージを出すよう指示できます。例えば「健康意識の高い人たちには、うちの製品のクリーンな原材料を強調してほしい」というような指示が可能です。
特筆すべきは、AI Briefが「確定する前にフィードバックできる」という点です。AIは設定内容に基づいてサンプルの広告素材と検索クエリのプレビューを提供します。広告主はそれを確認し、意図と合っているかどうか確認した上でフィードバックを行い、修正を加えることができます。AIに主導権を渡しつつも、ブランドの方向性を守るための「操縦桿」がついに実装されたと言えるでしょう。
AI Briefは英語でのAI Max for Search campaignsから順次展開されます。その後、Performance MaxおよびAI Max for Shopping campaignsへの展開も予定されております。また、現在使用している「テキストガイドライン」は、AI Briefに移行した際に自動的にメッセージングガイドラインへ統合されます。
新機能2:テキスト免責事項
一見地味に見えますが、特定の業種にとっては非常に重要な機能追加です。
最終ページURLの拡張は大変便利な機能ですが、規制業界の広告主(金融機関、製薬会社、保険会社など)にとってはひとつの問題がありました。広告に必ず掲載しなければならない法定記載事項(リスク告知文など)を固定したまま、最終ページURLの拡張を有効にすることができなかったのです。最終ページURLの拡張を有効にすると広告テキストが自動生成・変更されるため、必須テキストの表示が保証されない、という懸念がありました。
この問題を解決するのが「テキスト免責事項」機能です。この機能を使えば、最終ページURLの拡張を有効にしていても、指定したテキストが必ず広告に表示されることが保証されます。数週間以内に展開予定と発表されており、これにより規制業界の広告主も最終ページURLの拡張の恩恵を受けながら法令遵守を両立できるようになります。
新機能3:ショッピング・旅行への展開
そして最も注目度の高いアップデートが、AI Maxの対象フォーマット拡大です。詳細は次の章で詳しく解説しますが、AI Maxは検索広告だけでなく「ショッピング広告」と「旅行向けの検索広告」にも展開されることが発表されました。
第3章:AI Max for Shopping campaigns — 小売の未来を先取りする
現代のショッピング検索が抱える課題
小売業者がショッピング広告を運用する上で、最近大きな変化が起きています。消費者がショッピングのためにGoogleを使う際の検索スタイルが変わってきているのです。
以前は「ナイキ スニーカー 白」「ソファ 3人掛け 革」のような、製品カテゴリ+属性のシンプルな検索が主流でした。しかし今は違います。「普段使いにもフォーマルにも使える清潔感のある服ってどんなの?」「長持ちする素材で、洗濯機で洗えるリビングのラグがほしい」のような、会話形式の商品探索段階の検索が増えています。
問題は、従来のショッピングキャンペーンは商品フィードに登録された情報(商品名、価格、カテゴリなど)とユーザーの検索クエリを直接マッチングする仕組みになっているため、こうした会話形式のクエリに対応しにくいという点です。「ふわふわした素材でくつろげる服」という検索に対して、商品名が「コットンリラックスパーカー」という商品を適切に表示するのは、従来の仕組みでは難しいです。
さらに、広告の表現が静的なため、買い物客の意図が多様化している現代では「発見段階」のユーザーを取り込みにくくなっています。
AI Max for Shoppingの3つのコア機能
AI Max for Shopping campaignsは、これらの課題をMerchant Centerのフィードデータを活用して解決しようとするものです。
① テキストカスタマイズ Merchant Centerに登録された商品情報(素材の柔らかさ、耐久性、フィット感など詳細な属性情報も含む)を活用して、買い物客の検索意図と会話形式のクエリに対応した広告コピーを動的に生成します。「ふわふわ素材でくつろげる」という検索に対して、フィード内の「コットン100%・柔らかな肌触り」という情報を組み合わせ、最適な広告テキストを自動生成できます。
② 最終ページURL拡張 買い物客の検索意図に最も合致するランディングページを、サイト内から自動的に選択して誘導する機能です。商品ページだけでなく、カテゴリページや特集ページなど、コンバージョンにつながりやすいページへ適切に誘導できます。なお、最終ページURL拡張はいつでもオフにすることができ、ショッピング広告のみに絞った配信も可能です。
③ 最適フォーマット選択 テキスト広告とショッピング広告のどちらを表示するかを、AIが自動的に判断する機能です。買い物客のニーズに応じて最も効果的なフォーマットを自動選択することで、コンバージョン率の最大化を図ります。
Performance Maxとの関係
ここで「AI Max for Shopping と P-MAXは何が違うの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
Googleの説明によれば、P-MAXは引き続きクロスチャネルのパフォーマンス最大化に最適なソリューションです。YouTube、ディスプレイ、検索、ショッピング、Gmail、マップなど複数のチャネルを横断して配信を最適化したい場合はP-MAXが適しています。
一方、AI Max for Shopping campaignsは、既存のショッピングキャンペーンを運用しており、引き続きショッピング広告に特化した運用をしながら、AIの力でその精度と到達範囲を拡大したい広告主向けのソリューションです。
重要なのは移行の手軽さです。既存のショッピングキャンペーンを使用している広告主は、ワンクリックでAI Maxにアップグレードできます。既存の商品ターゲティング設定や入札の柔軟性はそのまま維持され、必要に応じて最終ページURL拡張をオフにすることも可能です。
また、Performance Maxにおいても最終ページURL拡張とフォーマット選択はすでに機能しており、ショッピング広告向けのテキストカスタマイズが新たに追加される予定です。
どんな小売業者にとって恩恵が大きいか
AI Max for Shopping campaignsの恩恵が特に大きいと考えられるのは、以下のような事業者です。
まず、製品の詳細な属性情報がMerchant Centerフィードに充実している事業者です。AI Maxはフィード内の詳細な情報を活用するため、素材・サイズ・用途・対象ユーザーなど豊富な情報が登録されているほど、より精度の高いマッチングが可能になります。
次に、ロングテールのニッチな検索クエリからの集客を強化したい事業者です。「普段使いもできる防水スニーカー」「アウトドアでも使えるポータブルBluetoothスピーカー」のような、複数の条件を組み合わせた複雑な検索に対応できることで、競合が少ないロングテールの需要を取り込めます。
また、商品探索段階のユーザーの取り込みに課題を感じている事業者にとっても有望です。「何を買うか決まっていないが、何か探している」段階のユーザーに対して、会話形式のクエリにマッチした商品を提案できることは大きな差別化になります。
第4章:Dynamic Search Ads(DSA)がAI Maxに強制移行へ
3つの発表の中で、既存の広告主に最も大きな影響を与えるのが、2026年4月15日に発表された「Dynamic Search Ads(DSA)のAI Maxへのアップグレード」です。
DSAとは何か
Dynamic Search Ads(動的検索広告)は、長年にわたって多くの広告主が活用してきた機能です。キーワードを事前に設定しなくても、Googleがウェブサイトのコンテンツを自動的に解析し、関連性の高い検索クエリに対して広告のヘッドラインとランディングページを自動生成してくれる機能です。
DSAの主な活用場面は、「キーワードでカバーしきれない検索に対応する網羅的な手段」として使うことでした。例えば、商品数が多いECサイトで、すべての商品ページに対して個別にキーワードを設定することは現実的ではありません。そういったケースで、DSAがサイトのコンテンツを読み込んで自動的に広告を生成してくれる仕組みが重宝されてきました。
なぜDSAは「過去のもの」になるのか
しかし、Googleの見立てでは、DSAは「現代の検索環境には不十分」なものになりつつあります。
DSAが活用するシグナルは、基本的に自社ウェブサイトのランディングページの情報に限られます。しかし現代の消費者は、ウェブサイトのコンテンツとは必ずしも直接対応しない、複雑で予測不可能なクエリを入力します。「旅行」「健康」「食品」といったカテゴリの中でも、個人の状況や文脈、感情的なニーズを組み合わせた多様な表現でGoogleを使います。
ランディングページのデータだけを参照するDSAでは、こうしたリアルタイムの意図情報を活用することができません。その点で、DSAは「現代の検索環境においてすでに限界に来ている」というのがGoogleの判断です。
AI MaxはDSAの「後継者」として何が違うのか
GoogleはAI MaxをDSAの「次世代版」と位置づけています。DSAが持っていた「ランディングページを活用した自動的な広告生成とマッチング」という基本的な価値はAI Maxでも引き継がれていますが、以下の点で大きく進化しています。
まず、活用する情報の幅が大幅に広がりました。ランディングページのデータに加え、広告主が提供した広告素材(見出し、説明文、画像など)、ユーザーのリアルタイムの検索文脈、過去の行動パターンなど、より豊富な情報を組み合わせます。
次に、より高度なコントロール機能が用意されています。ブランドセーフティのためのブランドコントロール、特定の地域への限定配信のためのロケーションコントロール、そして先述のテキストガイドラインやAI Briefなど、DSAでは実現しにくかった精緻なコントロールが可能です。
そして、パフォーマンスの改善も実証されています。Google社内データによると、AI Max for Search campaignsは検索クエリマッチング単独と比較して、検索クエリマッチング・テキストカスタマイズ・ファイナルURL展開の3機能をフル活用した場合、同等のCPA/ROASを維持しながらコンバージョンまたはコンバージョン値を平均7%向上させることが示されています(非小売広告主を対象とした2026年のGoogle社内データより)。
自動アップグレードのスケジュール
今回の発表の核心は、既存のDSA(および関連する機能)が2026年9月を目途に自動的にAI Maxへ移行されるという点です。
自動移行の対象となるのは以下の3種類の設定を持つキャンペーンです。
- Dynamic Search Ads(DSA)を使用しているキャンペーン
- 自動作成アセットを使用しているキャンペーン
- キャンペーンレベルのインテントマッチ設定を使用しているキャンペーン
移行は2つのフェーズで進みます。
フェーズ1:任意移行フェーズ(現在〜2026年9月)
今すぐ自分のペースでAI Maxへ移行することを、Googleは強く推奨しています。この段階で移行することで、以下の利点があります。
- 自分のビジネス要件に合わせてキャンペーン設定を細かくカスタマイズできる
- AI Maxの新しいコントロール機能に慣れる時間が確保できる
- データの蓄積により、自動移行後よりも早期にパフォーマンスが安定する
DSAユーザー向けには、履歴設定とデータを新しい標準広告グループに引き継ぐためのアップグレードツールが今週から順次展開されています。ACAおよびキャンペーンレベルのインテントマッチ設定ユーザー向けには、Google Ads管理画面上に通知バナーが表示されます。
フェーズ2:自動アップグレード開始(2026年9月〜)
9月からは、旧来の設定を持つ残りの適格な検索広告が自動的にAI Maxへアップグレードされます。また、DSAを使った新規キャンペーンはGoogle Ads、Google Ads Editor、Google Ads APIのいずれからも作成できなくなります。
アップグレード前に、アカウント内に通知が届く予定です。
自動移行時には、以下の方針で旧来の設定がAI Maxに引き継がれます。
- DSAユーザー:動的広告グループが標準広告グループに移行し、設定とデータが引き継がれる。AI Maxの3機能(検索クエリマッチング・テキストカスタマイズ・最終ページURLの拡張)がすべて有効化され、既存のURL管理設定も保持されます。
- 自動作成アセットユーザー:キャンペーンがAI Maxにアップグレードされ、検索クエリマッチングとテキストカスタマイズがデフォルトで有効化されます。
- キャンペーンレベルインテントマッチ設定ユーザー:キャンペーンがAI Maxにアップグレードされ、検索クエリマッチングがデフォルトで有効化されます。
9月末までにすべての対象キャンペーンのアップグレードが完了する見込みです。
今すぐ手動移行すべき理由
Googleは「自動移行を待つのではなく、今すぐ移行することを強く勧める」とメッセージを発しています。その理由はシンプルです。
自動移行の場合、パフォーマンスの安定性を確保するために旧来の設定を模倣した形でAI Maxが設定されます。つまり、AI Maxの可能性を最大限に活かした設定ではなく、あくまで「今まで通りに近い形」での開始となります。
一方、今自分でAI Maxへ移行した場合は、AI Maxの3機能をすべて有効化した上でビジネスに合った設定をゼロから組み立てることができ、パフォーマンスの最大化を早期に実現できます。
Googleはワンクリックでのテスト機能(実験)も提供しており、現在の設定とAI Maxのパフォーマンスを比較した上で移行を判断することもできます。
第5章:3つの発表が示す、Google広告の「大きな方向性」
ここまで3つの発表内容を詳しく見てきました。では、これらの発表が全体として示しているものは何でしょうか。いくつかの大きなトレンドが浮かび上がります。
トレンド1:「キーワード」から「インテント」へのシフトが加速する
GoogleはDSAのAI Maxへの移行、AI Max for Shoppingのリリースを通じて、広告配信の基軸を「キーワード」から「意図」へとシフトさせつつあります。
これはGoogleのビジネスとしての必然でもあります。AIオーバービューの普及により、「検索→結果リストを見る→クリックする」という従来のフローが変わりつつある中で、広告も「特定のキーワードに反応する」ではなく「検索の文脈と意図を理解して最適な提案をする」形に進化しなければ、ユーザーにとって意味のある存在でいられなくなります。
広告主にとってこれは、「キーワードリスト管理」という従来のコアスキルが相対的に重要性を失い、「ビジネスの本質・ターゲット・メッセージをAIに正確に伝える」スキルがより重要になることを意味します。
トレンド2:「コントロールとオートメーションのバランス」の新しい形
AI Briefの導入は、「AIに任せつつも、ブランドの意図を守る」という新しいコントロールの形を示しています。
過去、「完全自動」と「完全手動」の間で揺れてきた広告主の心理に対して、Googleはより洗練された解答を提示しようとしています。AIが仕事を担いますが、その「仕事の方針」を人間が言語で設定できます。これはLLM(大規模言語モデル)の普及によって初めて実現できるアプローチです。
「プロンプトエンジニアリング」が広告運用のスキルセットの一部になる未来が、現実のものとして見えてきました。
トレンド3:「会話型検索」時代の広告は「発見を助ける」ものになる
AI Max for Shoppingが特に強調しているのは、「ユーザーが何を探しているかを特定する前の段階」をカバーすることです。商品を探す前段階、つまり「何が自分に合っているかを探している」段階のユーザーに、AIが適切な商品を提案できるようになります。
これはEコマースにおける「上位ファネル(認知・興味)」での広告の役割を大幅に拡張するものです。従来、検索広告は「すでに何かを探しているユーザー」に対するアプローチだと理解されてきましたが、会話型の検索行動が普及することで、検索広告が購買プロセスのより上流をカバーできるようになります。
トレンド4:広告の「対象」がどんどん広がる
AI Maxがショッピングキャンペーンや旅行向けの検索広告にも展開されるということは、「AI Maxという思想」(意図ベースのマッチング × AIによるクリエイティブ最適化 × リアルタイムのURL展開)が、Google広告の全フォーマットに横展開されていくことを示唆しています。
今後、Display、YouTube、Gmail、Mapsといった他のフォーマットでも同様のアプローチが取られていく可能性は高いです。すべての広告が「AIが意図を理解して最適な形で届ける」という形になっていく、という大きな絵がGoogleの頭の中にあるのでしょう。
第6章:日本の広告主・マーケターが今すぐ取るべきアクション
では、これらの変化を踏まえて、実際に広告を運用している日本のマーケターはどう動けばよいのでしょうか。具体的なアクションをまとめます。
アクション1:DSAを使っているなら、今すぐアップグレードの準備を
最も緊急度が高いのは、現在DSAを使用している広告主です。2026年9月に自動移行が行われますが、待つよりも今すぐ移行する方が良い理由はすでに説明しました。
まずGoogleが今週から展開しているアップグレードツールを確認しましょう。ツールを使えば、DSAの履歴設定やデータを新しい標準広告グループへ引き継ぐことができます。移行後はワンクリック実験機能を活用して、現在の設定とのパフォーマンス比較を行いながら、AI Maxの設定を最適化していくことを推奨します。
アクション2:AI Maxの3機能をフル活用した設定を目指す
AI Maxを導入する際は、検索クエリマッチング・テキストカスタマイズ・最終ページURLの拡張の3機能をすべて有効化することを基本とします。Googleのデータが示すように、3機能をフル活用することで最大の効果が得られます。
ただし、最終ページURLの拡張については、誘導したいランディングページが明確に決まっており変更したくない場合はオフにすることもできます。ビジネスの状況に応じて判断しましょう。
アクション3:AI Briefの登場に備えて「ブランドの言語化」を今から進める
AI Briefはまだ日本語では展開されていていませんが(英語から順次展開)、準備は今から始めておくことをお勧めします。
具体的には、以下の質問に答えを用意しておきましょう。
- 「私たちのブランドが絶対に言ってはいけないこと」は何か?
- 「私たちが出したい検索クエリのカテゴリ」と「出したくない検索クエリのカテゴリ」は何か?
- 「私たちが最も届けたいターゲット像」とその人たちへのメッセージは何か?
これらの答えを言語化しておくことで、AI Briefが日本語で使えるようになったときにスムーズに設定できます。また、この言語化のプロセス自体が、ブランドの方向性を整理する良い機会にもなります。
アクション4:Merchant Centerのフィードを充実させる
ショッピングキャンペーンを運用している小売業者にとって、AI Max for Shoppingを最大限に活用するための最重要タスクは「Merchant Centerフィードの充実」です。
AIが商品とユーザーの検索意図をマッチングする際に使用するデータは、主にMerchant Centerのフィードから取得されます。商品名、説明文、カテゴリだけでなく、素材、サイズ感、用途、対象年齢、シーンなど、できるだけ豊富な属性情報を登録することで、AIのマッチング精度が向上します。
特に「会話形式の検索クエリ」に対応するためには、ユーザーが自然な言葉で表現する属性(「ふんわりとした手触り」「スポーツシーンでも使える」「洗いやすい素材」など)が商品説明に含まれていることが重要です。
アクション5:パフォーマンス計測の枠組みを見直す
AI Maxは従来のキーワードベースの運用と異なる動き方をするため、パフォーマンスの計測・評価の枠組みも見直す必要があるかもしれません。
例えば、特定のキーワードごとのパフォーマンスを細かく追跡することよりも、キャンペーン全体のCPA/ROAS、コンバージョン数の変化、新規クエリからのコンバージョンなどを重視した評価軸へのシフトを検討しましょう。
また、「どんな検索クエリで広告が出ているか」を定期的に確認する習慣は引き続き重要です。AI Maxの検索語句レポートを活用して、意図しないクエリが混入していないかを確認し、必要に応じてマッチングガイドラインや除外設定で調整することが大切です。
アクション6:規制業界の広告主はテキスト免責事項機能の展開を注視する
金融機関、製薬会社、保険会社、医療機関など、広告に法定記載事項が必要な業種の広告主は、「テキスト免責事項」機能の展開を注意深く追いかけてください。
この機能が使えるようになれば、これまで最終ページURLの拡張を使えなかった制約が解消され、より多くの関連ページへの誘導が可能になります。現在最終ページURLの拡張を無効にしている場合は、この機能の展開後に改めて最終ページURLの拡張の導入を検討する価値があります。
第7章:より深く理解するために — FAQと補足情報
最後に、ユーザーから寄せられやすいであろう疑問に対してQ&A形式でお答えします。
Q:AI Maxに移行したら、既存のキーワードキャンペーンはどうなる?
AI Maxは検索広告の中で有効化される機能で、既存のキーワード設定は保持されます。AI Maxは既存のキーワードでカバーされない検索クエリへのリーチを拡大するものであり、キーワードを削除するものではありません。ただし、AI Maxを有効化することで、キーワードと一致しない「追加的な」クエリにも広告が表示されるようになります。
Q:最終ページURLの拡張を有効にしたら、どのページでも広告のランディングページになってしまうのか?
最終ページURLの拡張はサイト内から「ユーザーの検索意図に最も合致するページ」を自動選択しますが、除外URLの設定が可能です。問い合わせページや会員専用ページなど、広告のランディングページとして適切でないページは除外設定ができます。また、最終ページURLの拡張はいつでもオフにすることができます。
Q:AI Maxのテキストカスタマイズで生成される広告テキストはブランドガイドラインに沿ったものになるか?
現時点では、広告主が提供する広告素材(見出し、説明文など)が素材として使用されるため、基本的にはその広告素材の範囲内でテキストが生成されます。AI Briefのリリース後は、より詳細なメッセージングガイドラインを設定することができ、ブランドトーンや禁止事項を指定した形での制御が可能になります。
Q:DSAが9月に自動移行されると聞いたが、日本のアカウントにも適用されるか?
Googleの発表はグローバルでの対応であり、日本のアカウントも対象となる可能性が高いです。ただし、地域によって展開のタイミングが異なる場合もあります。Google Adsの担当者またはGoogleのヘルプセンターで最新情報を確認することを推奨します。
Q:AI Brief は日本語でいつ使えるようになるか?
現時点では英語でのAI Max for Search campaignsから展開開始という発表のみで、日本語での展開時期は明言されていません。ただし、P-MAXやAI Max for Shopping campaignsへの展開も計画されており、多言語対応も順次進む可能性が高いです。公式発表を継続して注視することをお勧めします。
Q:AI Maxを有効にするとコストが増えるか?
AI Maxは予算を自動的に増やすものではありません。設定した入札戦略と予算の範囲内で、より多くの関連クエリに対して広告が表示されるようになります。ただし、リーチが拡大することで費用が増加する可能性もあるため、導入初期はパフォーマンスと費用の変化を注意深く確認することをお勧めします。
おわりに:AIによる変革を「受け身」ではなく「主体的に」乗りこなす
GoogleのAI Maxを巡る一連の動きは、Google広告が「キーワードベースの人力運用」から「意図ベースのAI協調型運用」へと本格的に移行するという宣言に他なりません。
この変化に対して、「コントロールが失われる」という不安を感じる広告主もいるかもしれません。しかし、AI Briefの登場が示すように、Googleが目指しているのは「AIがすべて決める」ではなく「人間の専門知識とAIの処理能力を組み合わせる」という形です。
重要なのは、この変化を受け身で受け入れるのではなく、主体的に活用することです。自社のビジネスを深く理解しているのは人間です。AIに「何を達成したいか」「どんなメッセージを誰に届けたいか」「どんな制約があるか」を正確に伝えるスキルが、これからのデジタルマーケターに求められる最重要スキルになるでしょう。
DSAのAI Maxへの強制移行は「9月」という明確な期限があります。その日を受動的に待つのではなく、今すぐ自分のキャンペーンを棚卸しし、AI Maxの各機能をテストし、AI Briefに備えたブランドの言語化を進めましょう。そういった先手を打った動きが、次の競合との差を生み出します。
Google Marketing Liveでさらに大きな発表が続く可能性もあります。この記事でカバーした内容はその序章に過ぎないかもしれません。引き続き最新情報を確認しながら、AIと共に進化するGoogle広告の世界に備えていきましょう。
現在の運用に不安を感じている皆さまへ
AI Maxへの移行を検討しているものの、「自社の現状の広告がどうなっているか把握できていない」という方は、まず無料診断からはじめてみるのも一つの手です。弊社では、リスティング広告の無料診断を実施しております。現在の運用状況を客観的に確認するきっかけとしてお気軽にご活用ください。
参考リンク
- AI Max Turns 1 with new ways to steer performance and expansion to more advertisers — Google公式ブログ(2026年4月30日)
- Adapt your Shopping campaigns to modern Search with AI Max — Google公式ブログ(2026年4月30日)
- We’re upgrading Dynamic Search Ads to AI Max — Google公式ブログ(2026年4月15日)
この記事を書いた人


