
目次
はじめに:なぜ、今「SNSマーケティング」が重要なのか?
企業のマーケティング担当者の皆さん、こんな経験はありませんか?
「リスティング広告やSEOに力を入れているのに、若年層へのリーチが伸び悩んでいる」
「自社のWebサイトにはアクセスが集まるものの、SNSからの流入が少ない」
その原因の一つに、若年層の情報収集行動の変化が挙げられます。
これまで何かを知りたいときにはGoogleやYahoo!といった検索エンジンを使うのが一般的でした。しかし、Instagram、TikTok、X(旧Twitter)といったSNSが日常に溶け込んでいる現代の若者たちは、これらのSNSを「検索ツール」として活用しています。
この「SNS検索」という新しい行動様式を理解し、従来の「Web検索」との違いを把握することは、若年層に響くマーケティング戦略を構築する上で不可欠です。本記事では、両者の違いを明確にし、それぞれをどう使い分けるべきかを解説します。
第1章:「SNS広告」と「Web広告」が狙うべき顧客層
「SNS広告」と「Web広告」は、どちらも自社の商品やサービスを宣伝するものですが、その特性から、アプローチすべき顧客層が根本的に異なります。
1-1. SNS広告が響くのは「発見志向」の潜在層
SNS広告は、ユーザーが明確な目的を持たずに情報を探しているときに効果を発揮します。
目的の違い:ぼんやりとした好奇心
ユーザーは特定の答えを求めているわけではなく、「何かないかな?」という漠然とした興味や好奇心から検索しています。
例:「#カフェ巡り」「#イエベ春コスメ」など、トレンドや新しい情報を発見することを楽しんでいます。広告もこの文脈に沿った、視覚的に訴えかけるものが効果的です。
得られる情報の違い:リアルな共感と口コミ
SNS検索の結果は、一般ユーザーが投稿した写真や動画が中心です。「お店の雰囲気は?」「実際に使ってみた感想は?」といった、公式サイトでは得られないリアルな情報が手に入ります。ユーザーは自分と似た感性を持つインフルエンサーや一般人の投稿を参考にすることで、「自分も試してみたい」という共感が生まれます。
1-2. Web広告が響くのは「目的志向」の顕在層
一方、Web広告は、すでに購入や利用の意欲が高いユーザーに直接アプローチするのに適しています。
目的の違い:明確な答えを求める「目的志向型」
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- ユーザーはすでに解決したい課題や知りたい情報が明確な状態で検索します。
- 例:「渋谷 居酒屋 個室」「iPhone 15 口コミ」「引っ越し 手続き 方法」など、具体的なキーワードを入力して、効率的に答えにたどり着きたいと考えます。
得られる情報の違い:信頼性と体系的な情報
Web検索の結果には、企業の公式サイト、専門家のブログ、ニュースサイトなどが表示されます。これらの情報は、編集者や専門家によって監修されていることが多く、信頼性が高い傾向にあります。
第2章:若年層にアプローチするための使い分け戦略
「Web広告」と「SNS広告」の特性を理解したところで、次に大切なのは「それぞれの強みをどう活かすか」という点です。若年層に効果的にアプローチするためには、両者を組み合わせた戦略が不可欠です。
2-1. 【フェーズ別】SNS検索とWeb検索の役割
マーケティングの各フェーズにおいて、両者の役割は異なります。
【認知・興味フェーズ】
役割:SNS検索が主役
この段階のユーザーは、まだ商品やサービスについて具体的に知りません。そのため、発見志向型のSNS検索を活用し、視覚的に魅力的なコンテンツで「なんとなくいいな」「面白そう」と思わせることが重要です。
【検討・比較フェーズ】
役割:Web検索が主役
SNSで商品を知ったユーザーは、「本当に自分に合っているのか」「他社製品との違いは?」といった疑問を持ち始めます。この段階では、目的志向型のWeb検索が活躍します。
【購入・体験フェーズ】
役割:Web検索とSNS検索の連携
購入を検討しているユーザーは、最終的な決断を下すために、公式サイトで詳細を確認したり、SNSで利用者のリアルな声を探したりします。
2-2. Web検索の重要性を再考する「SEO」と「コンテンツマーケティング」
若年層のSNS検索が増えたとはいえ、Web検索がその役割を終えたわけではありません。Web検索は、企業の長期的な資産を築く上で依然として非常に重要な役割を担っています。
SEO(検索エンジン最適化)の役割
Web検索の主流であるGoogleやYahoo!といった検索エンジンは、ユーザーにとって「辞書」のような存在です。何か困ったとき、知りたい情報が明確なとき、ユーザーは必ずWeb検索に戻ってきます。
このとき、自社のWebサイトが検索結果の上位に表示されるよう、SEO対策を徹底することで、安定した自然な流入(オーガニック検索)を確保できます。これは、広告のように費用がかかり続けるものではなく、一度構築すれば企業の資産となるものです。
コンテンツマーケティングの役割
「〇〇 選び方」「〇〇 使い方」といったキーワードでユーザーが検索したときに、ブログ記事等の役立つ情報を提供することで、自社を専門家として認識してもらい、信頼関係を築くことができます。
ブログ記事やオウンドメディアで良質なコンテンツを継続的に発信することで、ユーザーの潜在的なニーズに応え、ブランドのファンになってもらうことが可能です。
2-3. なぜ、Web・SNS運用だけでは不十分なのか?
WebサイトのSEO対策や、自社SNSアカウントでの情報発信は重要です。しかし、それだけでは情報過多の現代において、ユーザーに自社の情報を見つけてもらうのは困難になりつつあります。WebやSNSを「運用」するだけでは、競合他社の情報に埋もれてしまい、潜在的な顧客層にリーチできない可能性があるのです。
そこで必要となるのが「広告」です。広告は、ターゲットを絞り込んで情報を届けたり、ユーザーの目に留まりやすい場所に表示したりすることで、Web・SNS運用を加速させ、より確実な成果につなげることができます。
2-4. 成果を最大化する広告運用の実践戦略
上記の役割を踏まえ、具体的な広告運用戦略を見ていきましょう。
戦略1:SNS広告で「潜在層」に広くアプローチする
ターゲット設定のポイント
ユーザーの興味・関心、行動履歴に基づいたターゲティングで、まだ自社を知らない潜在層にリーチします。
例えばコスメブランドの場合、「美容」「スキンケア」「韓国コスメ」といった興味関心を持つユーザーにターゲティングをします。
クリエイティブのポイント
短い時間でユーザーの心を掴む、動画やカルーセル形式のクリエイティブが効果的です。
クリエイティブの活用:ユーザーが作った動画や写真を使うことで、広告感が薄れ、親近感が湧きます。
戦略2:Web広告で「顕在層」を確実に刈り取る
ターゲット設定のポイント
SNS広告に接触したユーザーを追跡するリターゲティング広告を配信します。
自社の商品名や関連キーワードを検索しているユーザーに、リスティング広告を出稿し、競合他社に流れるのを防ぎます。
これはユーザーがSNS広告をクリックして自社サイトを訪問した際に、あらかじめ埋め込まれたタグがその行動を追跡します。そのデータを基に「特定のSNS広告からサイトを訪問した人」のリストを作成し、Googleのディスプレイ広告や検索広告を配信します。これにより、SNSで興味を持ったユーザーに対して、Web上でも再度アプローチできます。
広告文のポイント
ユーザーが探している情報(価格、機能、口コミなど)を明確に記載します。
「〇〇(商品名) 送料無料」「〇〇(サービス名) キャンペーン中」といった具体的な文言で、購入を後押しします。
戦略3:広告とWebサイトをシームレスにつなぐ
広告とLP(ランディングページ)の連携
SNS広告で興味を持ったユーザーがクリックした先のLPは、広告の世界観を損なわないデザインにしましょう。
LP内には、SNSで発信したハッシュタグや投稿の埋め込みを入れることで、ユーザーの信頼感をさらに高めます。
出典: Google広告ヘルプ「データ セグメントについて」、meta広告:「カスタムオーディエンスについて」
第3章:SNSとWebの組み合わせで成功したマーケティング
ここでは、実際にSNSとWebを組み合わせたマーケティング戦略の成功事例を紹介します。
事例1:アパレルブランドA社の「新規顧客獲得」戦略
- 課題:Web広告中心の施策で、若年層の新規顧客獲得に伸び悩み。
- 戦略:
SNSマーケティング(Instagram、TikTok):新作のアイテムを、流行りのBGMとインフルエンサーのダンス動画で投稿。ハッシュタグ「#〇〇コーデ」をキャンペーンとして展開し、潜在層へのリーチを拡大。
Webマーケティング(リスティング、リターゲティング):「A社 〇〇コーデ」といった指名検索や、SNS広告をクリックしたユーザーに対して、Webサイトへ誘導する広告を配信。 - 結果:SNS経由のWebサイト訪問者数が前年比で200%増加。さらに、Webサイトからの新規購入率も向上し、SNSが新たな顧客獲得のチャネルとして定着しました。
第4章:SNSとWebの連携を成功させる「データ」と「分析」
SNS広告とWeb広告の連携は、ただ両方の広告を出稿するだけでは不十分です。それぞれのプラットフォームから得られるデータを統合的に分析し、PDCAサイクルを回すことで、初めて最大の効果を発揮します。
4-1. 統合的なデータ分析の重要性
クロスチャネル分析の必要性
-
- SNS広告では、「いいね」や「シェア」、動画の視聴完了率などのエンゲージメントデータが、Web広告では「クリック率」や「コンバージョン率」、Webサイト上でのユーザー行動データが取得できます。
- これらのデータを個別に見ていては、ユーザーがどのような道のりを経て購買に至ったのか、全体像を把握することは困難です。SNSとWebのデータを統合的に分析することで、「SNS広告がどれだけWebサイトの訪問者数を増やしたか」「どのSNS広告のクリエイティブが、Webサイトでの購入につながりやすいか」といった、より深いインサイトを得ることができます。
顧客の全体像を把握する
統合的な分析により、ブランド認知から購入に至るまでの各フェーズで、どの媒体がどれだけ貢献しているかを明確にできます。
例えば、SNS広告で認知を広げた層が、その後Web検索で情報収集し、最終的にメルマガ経由で購入する、といった一連の流れが見えてきます。この全体像を把握することで、予算配分を最適化し、無駄な広告費を削減することが可能です。
4-2. 広告効果を最大化するPDCAサイクル
- Plan(計画):ペルソナやカスタマージャーニーマップに基づき、SNS広告とWeb広告の役割を明確に設定します。
- Do(実行):計画に沿って広告を配信し、各種データを収集します。
- Check(評価):SNSとWebのデータを統合的に分析し、「狙い通りに潜在層にリーチできたか」「広告経由のWebサイト訪問者は、Webサイト内でどのような行動をとったか」などを詳細に評価します。
- Action(改善):分析結果を基に、次の広告配信計画に改善点を反映させます。例えば、「特定のSNS広告から流入したユーザーの購入率が高い」という結果が出れば、その広告のクリエイティブやターゲティングをさらに強化するといった改善を行います。
このPDCAサイクルを高速で回すことが、若年層の移り変わりやすいトレンドに対応し、常に高い広告効果を維持するための秘訣です。
まとめ:若年層攻略は「SNS」と「Web」の連携が鍵
本記事で解説したように、若年層の情報収集行動は多様化しており、「SNS検索」と「Web検索」のどちらか一方に偏ったマーケティングでは、成果を出すのが難しくなっています。
若年層の心をつかむためには、
- 認知・興味フェーズでは、SNS検索の強みである「発見」を促す視覚的な広告で潜在層にアプローチ。
- 検討・購入フェーズでは、Web検索の強みである「効率」を活かし、具体的な情報を提供して購入を後押しする。
この連携こそが、成果を最大化するための鍵となります。
これからのマーケティングに必要な3つの視点
若年層に響くマーケティングを実現するために、企業は以下の3つの視点を持つことが不可欠です。
- 若年層の行動様式を深く理解する ペルソナやカスタマージャーニーマップを活用し、彼らがどこで、何を、なぜ探しているのかを深く分析しましょう。彼らの行動を理解することで、より響くコンテンツや広告を制作できます。
- 短期的な「広告」と長期的な「運用」を組み合わせる SNS広告やWeb広告は、短期間で成果を出すための強力なツールです。一方で、SEOやコンテンツマーケティングといった運用は、企業の信頼と資産を築くための地道な活動です。この両者をバランス良く組み合わせることが、持続的な成長につながります。
- データに基づいたPDCAサイクルを回す SNSとWeb、それぞれのデータを統合的に分析し、ユーザーの購買プロセス全体を把握しましょう。どの広告が、どのタイミングで、どのような成果を生み出したのかを明確にすることで、次の施策をより効率的に改善できます。
若年層の行動を理解し、SNSとWebを組み合わせたマーケティング戦略を成功させたいとお考えの方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。
クイックリーでは、SNSとWebの連携を重視した総合的な広告戦略をご提案しています。
- SNS広告運用代行:ターゲットに響くSNSプラットフォーム選定から、目を引くクリエイティブ制作、日々の運用までを一貫してサポートします。
- Web広告運用代行:SNS広告と連動したリスティング広告やディスプレイ広告の設計・運用を行い、購入や問い合わせといった具体的な成果につなげます。
- データ分析・改善提案:SNSとWeb両方のデータを統合的に分析し、次なるアクションを導き出します。
若年層の心をつかみ、ビジネスを成長させたいとお考えのマーケティング担当者様は、ぜひ一度クイックリーにご相談ください。貴社の課題に合わせて、最適な広告戦略をご提案いたします。
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